戸隠古道を歩く
いよいよ11月23日(木・祝)、長野市で「第112回長野えびす講煙火大会」が開催されます。晩秋の夜空を彩る1万数千発の花火を製造し打ち上げているのが、ともに長野市で大正5年創業の老舗、信州煙火工業株式会社と株式会社紅屋青木煙火店です。各地の有名花火大会で作品を披露している全国トップクラスの2社が繰り広げる、光の技の競演。それが「長野えびす講煙火大会」の特徴であり、大きな魅力です。
長野えびす講煙火大会特集の第2回は、長野市の二大煙火師、信州煙火工業株式会社の藤原信雄さんと、株式会社紅屋青木煙火店の青木昭夫さんに大会の魅力と大会にかける思いをうかがいました。(第1回特集はこちらから)
まずはじめにご登場いただくのは、信州煙火工業社長の藤原信雄さんです。
「信州は昔から花火の生産県として名を馳せていました。創業者である私の祖父は商売に長けていて、花火を大量に売る方法としてスターマインを考え出しました。今ではどの大会にも欠かせない花火ですね。父親は一本の筒でたくさん打つ“早打ち”を広めました。これは煙火師が筒に次々と玉を入れて打ち上げる方法。高い技術が必要な上、危険が伴うので最近はあまり用いられませんが、当社は狭い会場では早打ちを披露しています」
打ち上げ花火の仕組みをちょっと解説
打ち上げ花火の仕組みを簡単にご説明しましょう。花火玉を空に打ち上げるためには、玉の大きさに合った「打上筒」が使われます。この筒の中に花火玉を入れ、点火装置のスイッチを入れると速火線(導火線)が燃焼し打ち上げ火薬が爆発、花火玉が打ち上がります。
「星」(火薬玉)を天日で乾燥させる
上空で花火玉の中の導火線が燃焼し割薬に引火すると玉は爆発。中の「星」といわれる火薬玉に火がついて球状に飛び散ります。この瞬間を私たちは地上で眺め、「たまやー!」と喝采を送る、というわけですね。
これが花火の製造風景です
花火が思い通りの色、形に広がるように星を丁寧に詰め、糊を乾かしながら何重にも紙を貼り、丸い花火玉をつくります。紙は大きい玉になると50枚から60枚にもなるとか。花火玉は天日で乾燥させるのが基本ですが、青木煙火店では専用の乾燥室も使っています。
「星」といわれる火薬を丁寧に詰めます。
これが花火玉の半分。もう半分を重ねて球体をつくります。
紙を何重にも巻いてしっかりと糊付けし、天日で乾燥させます。
天日乾燥が基本ですが、専用の乾燥室で乾燥させる場合も(紅屋青木煙火店)。
おおっ、と驚くような花火をつくりたい
「『長野えびす講煙火大会』にかける思いなら、うちの若手煙火師に聞いてやってよ」。藤原さんは満面の笑顔でそう言い、同社期待の若手煙火師、宮澤清志さん(左)と田中優さん(中)を紹介してくれました。
「えびす講煙火大会は全国から注目されているので、いつも皆さんがおおっと驚くような花火ををつくりたいと思っています。1年の集大成でもあるので、社員みんなで話し合いながらつくりあげていきます」と宮澤清志さん。
演出家自身が鳥肌を立てるミュージックスターマイン
近年人気を集めているのが、花火と音楽を完全にシンクロさせた新しい演出の花火「ミュージックスターマイン」。同社でその演出を担当しているのが田中優さんです。作品は全国的に評価が高く、長野えびす講煙火大会でも見どころのひとつになっています。
「自分なりに考えたテーマに合った音楽をまず決め、そこに花火を合わせていくのが僕のやり方。最初から最後までドラマチックで飽きさせない構成を心がけています。迫力だけの面白さだけでなく、見入るような、不思議な部分があってもいい。時々、自分の想像を超えてすごいものができることがあります。その時は鳥肌が立ちますね」と田中さん。演出家の田中さん自身が鳥肌を立てるミュージックスターマイン。ぜひ観覧席で観てみたいですね。
日本煙火芸術協会会長の技、惜しげもなく
「昔から、長野の花火はきれいに丸くなる品質の高さが特徴。それは同業者との激しい競争の中で培ってきた技術力の賜物です」
そう話すのは、紅屋青木煙火店社長の青木昭夫さん。藤原さんと双璧をなす長野が誇る煙火師です。お祖父さんの儀作さんは当時「花火の神様」と呼ばれ、お父さんの多門さんも有名な煙火師でした。ご本人も、全国の花火大会で内閣総理大臣賞をはじめ、受賞の常連。現在、名だたる煙火師が集まる技術者集団「(一社)日本煙火芸術協会」の会長も務めています。
「地元の煙火師として、皆さんに喜んでいただける花火を上げようと毎年工夫をこらしています。全国の煙火師たちが観に来ますから気を抜けず、自信を持って披露できる花火をつくろうと力が入ります。ですから、とても見応えがあると思いますよ。それが無料で観られるのですから、とてもお得な花火大会といえるのでないでしょうか」
煙火師として日本トップクラスの技術を持つ青木さんは、新しい花火の演出にもどん欲です。各地の花火大会のハイライトになりつつあるミュージックスターマインも、青木さんが先がけて取り組んだもの。10年ほど前、アメリカ・ラスベガスで使っているコンピュータ制御の打ち上げ花火システムを導入し、現在のかたちを創り上げてきました。
「プログラムをつくっているのは、うちの若手煙火師。音楽はクラシックを使うことが多いですが、担当者の感性に響く曲を選んでいるようです。煙火師としての技術はもとより、その人の感性が大いにものをいう花火ですね」
あっ、きのこだ!
一方、青木さんは花火で具体的な形を表現することも得意です。例えば、地元のきのこメーカーの依頼で、さまざまなきのこを夜空に打ち上げたり、スターマインの中に地元放送局各社のゆるキャラを登場させたり。青木さんの技術と感性、恐るべし、です。
全国の花火大会の締めくくりとして、長野の二大煙火師が競演する「第112回長野えびす講煙火大会」。全国の煙火師が競い合う「全国新作花火コンテスト」も同時開催し、いよいよ11月23日(木・祝)打ち上げです。皆さまのお越しを心からお待ちしています!
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長野えびす講煙火大会に関するお問い合わせは…
長野商工会議所 TEL:026-227-2428
HP:http://www.nagano-cci.or.jp/ebisukou/
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